2005年07月30日

手ぶれ補正ジャイロ進化中

旧聞になるが、デジカメwatchに「ソニー、手ブレ補正向けの小型2軸ジャイロモジュール」の記事が載っていた。ソニーのプレスリリースはこちら。
手ぶれ補正ジャイロとは、カメラの手ぶれを検出するための角速度センサーセンサーの事である。撮影するときに、カメラが縦方向に回転する(ピッチング)、或いは横方向に回転(ヨーイング)することがある。これが、手ぶれの原因となる。手ぶれ補正ジャイロは、これを検出するものである。手ぶれ補正の簡単な解説は、松下のこのページでとりあえず。(ジャイロの動作原理の話はないが)

この記事、私が仕事でやってることに随分近いので、当り障りないようになるべく一般論で済ませておきたい(笑)

手ぶれ補正ジャイロのトレンドは、大きく分けて二つある。
一つは、小さく・薄く・省電力。フットプリント(占有面積)を小さく、高さを低くする事に、鎬を削っている。コンパクトデジカメに搭載されることも有って、消費電力も結構気にされるようだ。また、従来周辺についてたフィルタ・IC等もワンパッケージに内蔵しようとしている。先のソニーのセンサーも業界最小を謳っているが、どこかがまた記録を破ろうとするだろう。
二つ目は、二軸化。これまで、ピッチング・ヨーイングそれぞれ別にセンサーを持たせていたが、一つのセンサーで両方とも検出できるように、進化していっている。これも今まで二つ乗っけたものを一つに出来るということで、小面積化に貢献するといえるだろう。
手ぶれ補正ジャイロの性能については、例えばカーナビに使われるジャイロに比べれば、感度や耐環境性の面で厳しいことは言われないのが一般的であるという。反面、「じゃあ、安くして」って話にもなるので、コスト面が随分大変のようだ。

最近では、手ぶれ補正ジャイロをカメラ(と交換レンズ)やビデオカメラだけでなく、カメラ付き携帯にも搭載しようとする方向になっている。確かに大きくて重い一眼レフのようなカメラの方がかえって手ぶれしにくいと思う。軽くて小さいコンパクトデジカメの方が、手ぶれしやすいだろう。カメラつき携帯ならなおさらである。携帯は最近、動画も撮るのでなおさら市場からの要求がある。
つまり、市場は大きいと分かっている。だから、各社とも結構気合を入れて参入してきているのだ。冒頭に触れたソニーの場合は、デジカメ(サイバーショット)だけでなく、ソニーエリクソンと言う携帯メーカーを傘下に持っているので自家消費分も多いだろうが、外販もするそうだ。
ところで、電子機器に搭載するジャイロの有名どころは、村田製作所、NECトーキン、セイコーエプソンと言ったあたりだろうか。村田が筆頭じゃないか?

風の便りに(笑)聞く所によれば、各デバイスメーカー、いろんなカメラ屋さんからジャイロのサンプル要求がたくさんあるらしい。今、デバイスメーカーにとっては正念場である。これらは現在開発中のカメラに載るということである。来春から、夏のボーナス商戦にかけて、手ぶれ補正つきのカメラ(或いは一眼レフ用交換レンズ)・ビデオカメラが各社からいろいろ出てきそうで楽しみ。

もっとも、以上の話は手ぶれを検出する話である。スティルカメラの手ぶれ補正ジャイロの方式も色々だが、実際に手ぶれを補正する方法も様々。いくつか挙げれば、
・補正光学系(レンズ)を用いる(ex:松下のLUMIX等各社)
・CCDの方を動かす(ミノルタ独自 ex:α-7デジタル DimageA2等)
と二分されるか。変り種は、同じくミノルタのDimageX1。CCDとレンズユニットを一体にして動かしてしまうという珍しい方式。コンパクトデジカメだから、光学系も小さいので振り回せるということでしょうか。ユニークと言うか、強引と言うか。

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いくつか目にしたブログから。

このプレスリリースの素晴らしいところは,終わりの方に出てくる 本モジュールに採用されている圧電薄膜技術は、独立行政法人 産業技術総合研究所との共同開発によるものです。 という一文です.素晴らしいです.さすが新制ソニー株式会社です.絶賛です.さすが『誠』という言葉が好きな中鉢さんです.従来のソニー株式会社でしたら,この一文はなかったかもしれません.
QRIOの源流-QRIO共同開発者Blogより)

ソニーって、共同開発しててもちゃんと言わない社風だったんでしょうか!?

この記事のポイントは、なぜそんなデバイスをソニーが外販するのか、ということ。ブラックボックス化して世界最小最軽量手ぶれ補正機能付きハンディカムと銘打って発売すればいいのに。
ソニー、業界最小の手ぶれ検出用2軸ジャイロモジュール@Sensor News Japan
ソニーがこれまでMEMSをやっていたかどうか知らない。が、日経BPTech-On!の記事(ユーザー登録必要)を見ると、SI基板に圧電素子(ピエゾ?)を成膜したうえに、深堀りエッチングをやって片持ち梁を形成しているようだ。多分、この製品が初めての新プロセスだと思う。成膜とかエッチングとかの装置は、ビックリするほど高価なものである。専用のラインも構築しないといけないとなれば、投資金額は結構なものになる。投資コストの償却を考えて、外販し数をこなす事にしたのだろう。
posted by やすゆき at 23:57| Comment(6) | TrackBack(0) | 科学面 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
 昔、ジャイロをちょっとだけ扱ったことがあったので、気になって見てました。村田などのカメラ用の圧電ジャイロは、カーナビ用のものと比べると、小さいですよね。

 三軸使う用途で、大きさも気になりだして、カメラ用ジャイロを検討したことがありました。欲を言えば、三軸センサーをワンチップで収めた手ごろなセンサーが欲しかったんですが・・

 ところで、ジャイロは、戦車などでも砲安定装置として重要です。
Posted by Yamamoto at 2005年07月31日 13:00
yamamoto殿、こんばんは。相変わらず、遅いレスで申し訳ないです。

>昔、ジャイロをちょっとだけ扱ったことがあったので
ギャーッ、業界人(笑)
三軸でワンパッケージは難しいですね。センサエレメントの一つが、垂直に立たせないといけなかったりしますので。パッケージングが難しいはずです。そんなセンサ、あるんですか?あるとすると、ある程度大きいはずです。

私もあんまりジャイロ分かってないので(ヲイ!)、大雑把な話に終始しますが、大きいセンサ程性能がいいのです(感度が良い)。カメラ用は小さいので低性能になってしまいますが、用途として十分なのです。
カーナビ用は精度が求められます。あと、クルマ用なので環境が厳しい。どうしても、パッケージがゴツイです。

砲安定装置>
戦車も揺れますからね。もっとも積んでるジャイロは、本当にコマが回る奴じゃないでしょうか?どんな制御、してるんでしょうね?
Posted by やすゆき at 2005年08月01日 20:58
こんちは。
カメラの話しだったので、
読ませてもらいました。
手ぶれ補正カメラは、以前にも感じたように、
プロでも必要だと思っています。
長ダマ望遠レンズにはすでについてる。

ようはいかに小さくすることですか。
パナソニックFX9が欲しい。(^.^ゝ
Posted by もりもっちゃん at 2005年08月03日 11:39
もりもとさん、どうもです。

>長ダマ望遠レンズにはすでについてる。
マクロとかでも欲しいのではないでしょうか?プロじゃないから分からないけど。
そうなると、レンズ問わず手ぶれ補正が効くミノルタのCCDシフトは魅力的ですね。

ジャイロは手ぶれを空くまで検知するだけです。実際に補正するためには、レンズなどを機械的に動かさなくてはならない。こっちの機構の方が、儲かるんじゃないかと思う今日この頃(汗)

>パナソニックFX9が欲しい。(^.^ゝ
そうきたか(^.^ゝ
Posted by やすゆき at 2005年08月03日 20:10
>パナソニックFX9が欲しい。(^.^ゝ
そうきたか(^.^ゝ

いやぁ、このあと新機種が発表されまして、LX1が欲しくなりましたよ。これは、買いです。物欲は消えずです。(^^ゞ
Posted by もりもっちゃん at 2005年08月12日 15:48
まぁ「待ってりゃさらに良いのが出る」って待ってればきりがないですからね(笑)来年春以降、ポツポツといろんなところから手ぶれ補正のカメラ・レンズが出てきそうな気配がありますが、そこまで耐えられるか試されますね(苦笑)
私もね、スナップ用にコニミノのDimageX1が欲しいとは思うんですが。でも今持ってるEX-P600で頑張りつづけます。レンズバリヤーが閉じなくなっちゃいましたが(笑)
Posted by やすゆき at 2005年08月12日 16:41
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